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つくば市の取組

第15回 これからの持続可能なまちづくりとつくば駅周辺の取組について(2021年11月2日)

第15回 これからの持続可能なまちづくりとつくば駅周辺の取組について

 第15回の講座は、2021年11月2日(火)19時からオンライン(YouTube Live)で開催しました。
 ご講演いただいたのは、内山博文(うちやま ひろふみ)さんです。

 現在、内山さんは、u.company株式会社の代表とともに、つくばまちなかデザイン株式会社の代表も務めていらっしゃいます。
 内山さんには「これからの持続可能なまちづくりとつくば駅周辺の取組について」をテーマにご講演いただきました。

 司会進行は、筑波大学生命環境系教授の田村憲司先生です。以下、内山さんの講演の抜粋です。

20211102_第15回講座写真01内山博文さん(講師、つくばまちなかデザイン株式会社代表)

第1部 まちづくりとSDGs

 ”SDGs”と聞くと、一番に”環境保護”といったイメージを持たれる方が多いと思いますが、まちづくりとも密接に関わっています。
 現代では、社会が変化するスピードが非常に速くなっています。コロナ禍やその前のインバウンドブーム、もう少し遡るとリーマンショックなど。数年おきに大きなイベントが起こっています。そのような社会の変化についていけず、(炭鉱の閉山によって無人となった)軍艦島のように廃墟となる街も出てくるのではないでしょうか。
 そのような状態にならないように、SDGsを反映した持続可能なまちづくりを進めていく必要があります。

 

 皆さんが思い描く理想の都市像はどのようなものでしょうか?

 過去、人口集中や車社会へ対応するため、高層化や高速道路によって都市の機能性を追求する都市計画が考えられていました。
 しかし、アメリカ合衆国のジャーナリストであるジェイン・ジェイコブズは、そういった計画を次のように風刺します。「確かに安定し、左右対称、そして秩序正しい。生活で印象的で堂々たるものだ。まるで手の行き届いた立派な墓ではないか。」と。
 ジェイン・ジェイコブスは都市が多様性を持つためには「混合用途地域」などが必要であると主張し、この「混合用途地域」という概念は現代の都市計画の基本になりました。今のつくば市中心部のまちづくりとは逆の発想であると言えます。

 (この他にもヤン・ゲールの主張する「ヒューマンスケール」、隅研吾の「曖昧な境界」、大月敏雄の「住宅地の雑味」といった概念を挙げながら、持続可能なまちづくりを実現していくための考え方を示しました。)

20211102_第15回講座写真07 20211102_第15回講座写真11

 まちづくりをデベロッパー任せにしてしまうと、中心部には分譲マンションが建ち、少し離れたところには建売住宅地が並ぶという街並みになってしまいます。
 そのため、リノベーション的再生・再構築によって住宅の多様性や用途の混在を促す仕組みと、地域コミュニティづくりがまちづくりを行う上で重要になると考えています。

 

第2部 つくばの中心市街地におけるまちづくりとは?

つくば市やその周辺地域では、いま何が起きているのか?

 つくば市では、沿線開発と官舎売却により分譲住宅の供給が増え、人口が右肩上がりで増えています。
 しかし、人口推計によれば今後は老年人口のみが増え続けていくため、2035年までの人口増加の後、つくば市は著しい高齢化に悩まされることになります。

 また、つくば市のこの人口増加は、都心部からではなく近隣市町村(土浦市、水戸市、牛久市、常総市など)からの転入によるものであり、つくば市が近隣市町村の衰退の要因ともなっていると言えるのではないでしょうか。

20211102_第15回講座写真02

子育て世代の大量転入

 分譲住宅の供給によって子育て世代という同質の世代が大量に転入したことによって、街の多様性が失われるとともに、学校が不足することになりました。
 特に学校については、今の子どもたちが卒業するまでの今後15年ほどの短期間だけ、学校などのインフラ需要が急激に高まるが、その後すぐに高齢化によって必要性が失われてしまいます。つくば市の中心部では学校需要が高まっているにも関わらず、周辺部では学校が統廃合され、廃校の利活用が問題になっているなど、つくば市はその内部で自己矛盾を抱えている状態とも言えます。

筑波研究学園都市の特徴

 つくば市では、”つくば万博”の頃から、都市の空間利用についてハード面・ルール面ともにアップデートされずに運用され続けており、現在の社会問題につながっていると考えています。
 まず、つくば市では旧来型の車中心のまちづくりが行われたため、歩者分離式の歩きやすく、運転しやすいまちになっています。しかし、歩く人々にとって楽しいまちではなく、まちに人の賑わいが感じられない状態になっています。

 例えば、”広い幹線道路”は交通の合理性を高めることに大きく貢献していますが、幹線道路に街を分断された結果、道路沿いの店舗にダイレクトにアクセスすることができず、そのような商業が成立しにくくなっています。

 また、1ブロックの距離の長さも課題です。整然としていてジョギングなどをするにはいいのですが、ヒューマンスケールが欠如しており、せっかくの大通りが単調なものになり、人通りが生まれにくい街区構成になってしまっています。

 つくば駅周辺のペデストリアンデッキも、歩車を分離することで交通の利便性を向上させていますが、街の階層レベルが分かれることで人の行き交いが分断され、コンテンツの連続性が生まれにくい状態になっています。

20211102_第15回講座写真07

 中心部がこのような状態であるため、車社会であるつくば市の皆さんは、車でのアクセスがしやすい大型ショッピングモールを利用することになり、ますます中心部に商業が広がりにくい状態になっています。

つくば市の課題を解決するには?

 ペデストリアンデッキが動脈のように街をつなぎ、その中に広大な公園が点在している点は、他の都市に類を見ません。
 さらに最近始まった「つくチャリ」などの施策が進み、交通インフラがより整備されれば非常に住みやすい街になってくると考えています。

 この際、市場原理や経済性を優先するのではなく、あくまでも人の目線でまちを再構築していく必要があります。

 ただ木を植えて、きれいな空間を作れば人が集まる訳ではありません。
 中心市街地が多様性の交差点になることを目指し、多様な人が集まるためのコンテンツを、これから市民の皆さまとともに考え、築いていくことが「つくばまちなかデザイン株式会社」の役割だと考えています。

 現在、つくばセンタービルのリノベーションプロジェクトが進んでいますが、これだけで中心市街地の課題がすべて解決するとは思っていません。
 これは、あくまでも心市街地で活動する方々の拠点をつくり、中心市街地活性化の”きっかけ”となる事業であり、「どうすれば魅力なにぎわいのある場所になるのか」について、まちづくりの主役であるつくば市民の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

20211102_第15回講座写真05 20211102_第15回講座写真06

(抜粋終わり)

 

終わりに

 今回の講座は、つくば市中心市街地のまちづくりがテーマということもあり、つくば市民の皆さまは非常に注目されたことと思います。昔のにぎわいを知る方々の中には、つくば駅周辺の現状に寂しさを感じる方も多いのではないでしょうか。
 まちづくりの当事者は私たち市民一人ひとりであり、みんなでアイデアを出し、それを実践しながら愛着のある住みよいつくば市にしていきたいと感じました。

問い合わせ先

このページに関するお問い合わせはつくば市役所 政策イノベーション部 持続可能都市戦略室です。

〒305-8555 茨城県つくば市研究学園一丁目1番地1

電話番号:029-883-1111

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